第5回。前回の学習編で「サブエージェントの真価はコンテキストを汚さないこと」と書きました。言葉だけだとピンと来ないので、今回はあえて業務と無関係な「温泉宿の比較」で試します。Web調査という“いちばん散らかる作業”を切り出す効果が、いちばん分かりやすいからです。

ひとことで言うと:調査担当に「温泉宿を3つ調べて比較して」と丸投げしたら、各宿の長いページの中身はサブエージェント側に留まり、メインには比較表だけが返ってきた。だから続けて別の相談をしても会話が乱れない。

やったこと ― 「温泉宿を3つ調べて比較して」

使ったのは、学習編で紹介した research-assistant のような調査専門サブエージェント(複数の候補を調べて一覧表で返す役割)。メインの会話で「〇〇エリアの温泉宿を3つ、料金・泉質・アクセスで比較表にして」と頼むだけです。

流れ

  1. メインで「温泉宿を3つ調べて比較して」と依頼する。
  2. Claude が「これは調査タスクだ」と判断し、調査担当サブエージェントに委任する。
  3. サブエージェントが自分の作業領域で各宿のWebページを開き、料金・泉質・アクセスなどを読み込む。
  4. 読み込んだ大量の本文はサブエージェントの中だけに留まり、メインには返らない。
  5. メインには、比較軸をそろえたMarkdownの比較表だけが返ってくる。

返ってきたのは、こんな体裁の表でした(宿名・数値は架空のイメージです)。

宿料金帯泉質アクセス特徴
A旅館2.5万円〜硫黄泉駅から送迎15分露天付き客室
B温泉1.8万円〜単純泉駅徒歩8分夕食の評価が高い
C荘3.2万円〜炭酸水素塩泉車推奨客室数が少なく静か

動かして分かったこと

① メインの会話が驚くほどきれい

各宿のページは情報量が多く、まともに読み込むとメインの会話はあっという間に埋まります。ところがサブエージェントに任せると、メインに残るのは依頼文と最終的な比較表だけ。続けて別の相談をしても、文脈が乱れませんでした。学習編の「コンテキストを汚さない」が、体感としてはっきり分かります。

教訓:重い調査ほど切り出す価値が大きい。 「読む量が多い・使い捨て・要点だけ欲しい」作業は、サブエージェントの典型的な得意分野です。逆に、メインの文脈を踏まえた繊細な編集は本体でやるほうが向いています。

② 「比較軸」は頼むときに指定すると揃う

「料金・泉質・アクセスで比べて」と軸を先に渡すと、表の列がきれいに揃います。軸を言わないと宿ごとにバラバラの観点になりがち。欲しい比較軸は依頼文かエージェントの指示に書くのがコツでした。

③ 出典確認はメイン側の仕事

サブエージェントは要約して返すぶん、元ページの細部は手元に残りません。金額や条件など意思決定に直結する数字は、最後に出典を開いて確認するのが安全です。これは業務の調査でも同じ姿勢が必要だと感じました。

まとめ ― 分業は「読む作業」を預けると効く

  • 調査担当に頼むと、大量の調査本文がメインに流れ込まず、比較表だけが返る。
  • 比較軸を先に指定すると表が揃う。指定しないと観点がぶれる。
  • 要約ゆえに細部は落ちるので、重要な数字は出典で最終確認する。

次回は、AI に頼らず「確実に」処理を走らせる Hooks です。ここまでの Skills・Subagents が「賢さ」を足すものだったのに対し、Hooks は毛色の違う“自動化と安全装置”の話になります。